認知症治療の第一人者が教える 元気な脳で天寿を全う

治る認知症「正常圧水頭症」は3つの症状がみられたら要注意

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

 この治療で、Aさんはスタスタ普通に歩けるようになり、物忘れもなくなりました。手術から1カ月後には、娘さんと2人で紀伊半島の熊野古道をめぐるツアーにも参加したそうです。

■アルツハイマーと誤診されるケースも

 水頭症には、脳出血、脳腫瘍、頭部外傷など頭蓋内の疾患に引き続いて起こる「続発性水頭症」もありますが、正常圧水頭症(特発性正常圧水頭症とも言います)は、原因が明らかではありません。

 3大症状として、歩行障害、認知機能低下、尿失禁があります。Aさんも受けた髄液シャント術で、歩行障害は9割程度、認知機能低下と尿失禁は7割程度の患者さんで改善が期待できるとされています。

 今でこそ正常圧水頭症は「治る認知症」として専門医の間で知られるようになってきていますが、それでも高齢者に多い病気であることから、正常圧水頭症の検査をされないままアルツハイマー型認知症と誤診されていた──という話も聞きます。本当にその診断で正しいのか、状況によっては、疑いの目を持つことも必要です。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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