がんと向き合い生きていく

「美しい死」に感じる造詣の深さ 病理学者・森亘先生の言葉

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

「必要にして十分、要するに適度の治療が施された遺体には、それらを見事に反映している実像・所見、といったものがあることに気づくようになりました。そして、このように適度な医療が施された後の遺体には、その内臓には、それなりの美しさが感じられることに気付いた次第であります。……たとい最新の先端的治療が施された後であっても、それが適度であれば、そこに残されている変化は概して古典的で、自然です。すなわち必要にして十分な治療の結果は、その疾患の結末として起こるべくして起こった変化の集まりであり、あまり大きな修飾は感じられないように思われます。別な言葉を用いるならば、節度ある医療の結果と申せましょう。では、このようなものを何故『美しい』と感じるのか、それはまったく不思議なことで、実は私にも分からないのです」

 森先生は解剖を担当され、そのご遺体から「美しい死」を感じたのです。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事