私はこれまでたくさんの患者さんのみとりをし、解剖に立ち会わせていただきました。しかし、「美しい死」と思うことも、感じることもありませんでした。
■医師に知識、教養、品位を求めている
以前、私が勤めていた病院にも、謙虚な、姿勢の正しい方がおられました。長年、整形外科部長として勤務された先生で、ある知事のご親戚にあたられる方と聞きました。たまたま廊下でお会いすると、ぺいぺいの私に対しても、足を止め、礼をされるのです。私も思わず足を止め、礼をします。いつもとてもすがすがしく感じたのでした。
自慢の話になりますが、私の父は元気な頃は背筋がすっきりとして、姿勢が良かったように思います。長年、鉄道員として働いていましたが、過去に近衛兵でありました。私は、「お父さんがあんなに良い姿勢なのに、どうしてあなたは猫背なの?」と注意されたことが何回もあります。それを気にもとめず、少しも直さなかったからか、今になって腰痛に悩まされています。自業自得なのかもしれません。
がんと向き合い生きていく