第一人者が教える 認知症のすべて

認知症でも脳に器質的変化があるとうつ症状が出やすくなる

【アパシーとうつ病の違い】/(C)日刊ゲンダイ

 認知症の人へのアパシーに対する非薬物療法の効果を検証するため、56の研究に対して行われたシステマチックレビューが報告されています。システマチックレビューとは、質の高い複数の臨床研究を、複数の研究者らが、一定の基準と一定の方法に基づいて取りまとめた総説のこと。

 それによると、個々人に合わせて構築された活動がアパシーの軽減に期待できるとのこと。介護保険によるデイサービスなどのプログラムに参加するのも一つの方法ですし、私がかかわっているオンライン健脳カフェを活用してもらうのもいいと思います。パソコンさえつなげば家の中で参加できますから。認知症患者さんのことをよく理解している方が、多彩なプログラムから、患者さんに合ったものを選べばいい。

 薬物療法に関しては、コリンエステラーゼ阻害薬のアパシーに関する効果が確認されています。漢方薬の抑肝散と、コリンエステラーゼ阻害薬のひとつ「ドネペジル」との併用でアパシーが改善したとの報告もあります。なお、アパシーの症状はうつ病と似ているところもありますが、うつ病とは異なり、抗うつ薬による治療効果は期待できないとされています。

4 / 4 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事