老親・家族 在宅での看取り方

なるべく楽に最期を迎えられるようお手伝いをしてもらいたい…末期がんの夫と暮らす妻の思い

最愛の方と過ごす大切な時間を最期までサポート

「お写真を見たりしてお食事とか、おうちにいる感じを味わっていただくのがいいかと」(私)

「特別なことはせずに、普通の日常を過ごそうと思っています。今日の午後、いろんな方に来ていただきます。明日は意識が朦朧とするかもしれませんから」(妻)

「耳は聞こえていることが多いですよ」(私)

「じゃあ、めったなことは言えないですね(笑)。楽しく過ごします」(妻)

 別れを受けいれられたご家族の、前向きな明るさに私たちスタッフは救われています。

 普通は、呼吸の状態が悪くなって動けなくなってくる様子があると、週から日の単位になります。ただ、見極めが難しいところもあります。

「血圧が高くなってきたり、おしっこが出なくなると、もうこれが時間の問題になってくると思います。そのようなことは今のところないですが、それでも恐らく12月を迎えるのが難しいのかなと。人生に1度しかないお別れの期間ですので、言いたいことを全部言えたな、できたなってことを後から思えるように過ごしていただければ、それだけで満点です」(私)

 このやりとりから1カ月余りで、患者さんは旅立たれて行かれました。残された奥さまのやり終えたというすがすがしい様子に、私たちは勇気をもらったのでした。最愛の方と過ごす大切な時間を最期まで満点を目指してサポートする。これもまた在宅医療の大切な仕事なのです。

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下山祐人

下山祐人

2004年、東京医大医学部卒業。17年に在宅医療をメインとするクリニック「あけぼの診療所」開業。新宿を拠点に16キロ圏内を中心に訪問診療を行う。

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