がんと向き合い生きていく

命を考える──恩師の人柄と考えに触れて思わされたこと

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 講演が終わった夕方、宿泊するホテルに戻り、フロントで近くの駅までの翌朝のタクシー予約をお願いしました。私は朝6時半過ぎの東京行きの電車の切符を持っていました。翌日の午後に予定が入っていたので、昼ごろには東京に戻る必要があったのです。

 翌朝6時過ぎに駅に着くと、なんと、ホームに品川先生がいらっしゃいました。私がその日の早い列車に乗る予定をどこかで知って、見送りに来られたのでした。私はとても恐縮し、品川先生の温かい姿勢や人柄に触れた気がしました。

 さらに後日、品川先生が中心となって、年に何回か発行されている「セミナー医療と社会」の機関誌を数回分送ってくださいました。

 品川先生は、大学退官後、1991年12月から「セミナー医療と社会」を創設、主宰され、執筆、社会啓蒙、海外援助などに力を注がれたのでした。考え方や主張を活字にして残すことは、いずれ社会に役立つから大切なことだと考えられ、立派な論文をたくさん掲載されました。

2 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事