上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「もうひとりの自分」と「時間が止まる」 高みを目指す過程で現れた2つの感覚

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

■周囲の動きがスローモーションで見える

 もうひとりの自分と同じような感覚として、「時間が止まる」と感じることがあります。自分の持っている時間と周囲の時間に大幅なずれが生じ、周りの動きがすべてスローモーションで見えるのです。たとえば、手術を進めていて予期せぬトラブルが起こり、迅速に処置しないと危険だといった状況に陥ったとき、急に周囲の動きがスローになり、自分は普段通りにやっているつもりなのに、普通では考えられないようなスピードで正確に処置を終わらせることができた。そんな経験が何度もあります。

「火事場のバカ力」ではないですが、ピンチが訪れた際は極限まで集中力が高まり、これまで蓄積してきた経験、知識、技術などが瞬時にフル動員され、尋常ではないスピードで対処することができるのでしょう。

3 / 6 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事