がんと向き合い生きていく

末期がんの主人のさっぱりした顔を見て家に帰ってよかったと思った

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 自宅には、介護ベッドが運ばれました。電動のエアマットで、マットの中の空気が少しずつ動いて褥瘡ができないように工夫されています。だんだん痩せてきて、着替えや体位変換などを手伝ってくださった看護師さんは「褥瘡もできていないし、皮膚もきれいで……」と言ってくださいました。

 本人は孫に会えた時が一番の笑顔でした。週1回は、交代で息子と娘が来てくれます。

 こうして穏やかに寝て、窓の外の様子を眺めている姿を見ると、この平穏な日がいつまで続いてくれるかと思いました。主人が好きだったCDの歌謡曲を流したりしています。

 ケアマネジャーさんの手配で、先日は出張で散髪もできました。ひげもきれいに剃っていただきました。さっぱりした主人の顔を見て、やっぱり家に帰ってよかったと思いました。散髪は、住んでいる地域で違うらしいのですが、要介護3以上で市からの助成サービスがあります。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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