上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

脈拍が速いと早死にするという説は本当か?頻脈は心房細動リスク増

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 われわれヒトの心拍数は安静時で1分間に60~70回、世界全体の平均寿命は73.3歳です。「1分間で70回、生涯で20億回」を当てはめて計算すると54.3年になってずれがありますが、この数字は終戦直後の日本人の平均寿命と同じくらいといわれています。

 心拍数と寿命の関係について科学的に確かな根拠がある研究結果は存在しないのですが、こうした情報がベースになって、脈拍が速い人は早死にするという話が広まっていったのでしょう。

 とはいえ、臨床的にも「脈拍が速い=頻脈」の人は、健常な人と比べて生存率が低くなる傾向があります。1分間の脈拍が100回以上になると頻脈と呼ばれ、心房細動を発症するリスクがアップします。心房細動は心臓が細かく不規則に収縮を繰り返す不整脈の一種で、頻脈の程度が強いと一時的な心臓機能低下から血栓ができやすくなり、心原性脳梗塞を起こす危険が高くなるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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