医療だけでは幸せになれない

マスクの予防効果を検討…もうひとつのランダム化比較試験「バングラデシュの研究」

バングラデシュの研究では…(C)ロイター

 この研究の適切なマスク着用率もデンマークの研究と似ている。マスク推奨群で42.3%がマスクを着用し、非推奨群でも13.3%がマスクを着用したと報告している。感染予防効果は相対危険とその95%信頼区間で0.905(0.815~0.995)と報告されている。1000の感染を905に減らし、その幅は大きく見積もれば815まで減らすかもしれないし、小さく見積もっても995まで減らすかもしれない。小さく見積もっても多少は予防効果があるかもしれない、という結果である。危険率は0.03と5%未満、統計学的にも有意な差である。

 この結果をデンマークの研究と比較してみよう。デンマークの研究では相対危険が0.82とこの研究より効果が大きかったにもかかわらず、「統計学的にははっきりしない」という結果である。どういうことだろうか。

■有意差は研究規模に影響される

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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