医療だけでは幸せになれない

マスクの予防効果を検討…もうひとつのランダム化比較試験「バングラデシュの研究」

バングラデシュの研究では…(C)ロイター

 統計学的に有意かどうかは、効果の大きさだけでなく、研究の規模にも影響する。研究規模、つまり研究の参加者が多ければ効果が小さくても統計学的に意味のある差だという結果を出せるのである。実際の研究への参加者を見てみると、デンマークの研究では6024人に対し、バングラデシュの研究ではその50倍以上の34万2483人である。

 さらにこの研究では布マスクとサージカルマスクの両方を使用しており、それぞれの検討結果も示されている。布マスクグループの相対危険と95%信頼区間は0.925(0.766~1.083)、サージカルマスクグループでは0.894(0.782~1.007)である。

 この結果だけを見ると、布マスクもサージカルマスクも統計学的に有意とは言えない結果であるが、これは2つのグループに分けたために参加者の数が減った影響が大きい。しかし、世に流れる情報の中にはこのグループ別の結果のみの結果を流し、統計学的な差はなかったと結論するようなものがある。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。

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