第一人者が教える 認知症のすべて

アルツハイマー病の新薬は認知機能低下を7カ月半遅らせる

アミノロイドβがアルツハイマー病を引き起こす(写真はイメージ)

 先週21日、アルツハイマー病の新薬「レカネマブ」の承認が、厚生労働省の専門部会で了承されました。厚労相が正式承認すれば、アルツハイマー病の原因物質を脳から取り除く初めての薬となります。

 アルツハイマー病が初めて報告されたのは1906年。ドイツの医師、アロイス・アルツハイマー博士が、記憶障害があり、51歳で亡くなった女性の脳を解剖して調べたところ、脳の萎縮とともに脳の神経細胞の外にシミのようなものがあることを発見。「老人斑(現在はアミロイド斑とも呼びます)」と名づけました。

 その後、大きな進歩があったのは1980年代、この老人斑の主成分がアミロイドβタンパクであるという発見でした。さらに1990年代には、アルツハイマー病発症が多い家系の遺伝子を調べたところ、APP(アミロイド前駆体タンパク質)を作る遺伝子の変異があり、それがあるとアミロイドβが固まりやすくなることがわかったのです。そして、英国のジョン・ハーディー教授は、アミロイドβがアルツハイマー病を引き起こす原因に関係しているという仮説を発表しました。

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新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

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