第一人者が教える 認知症のすべて

糖尿病は生涯を通して認知症のリスクを上げる…1.54倍に増加

血管病変は食事と運動で予防(C)日刊ゲンダイ

 看護師のHさんは、なりたてほやほやの時、先輩看護師から投げかけられた忘れられない言葉があるといいます。

「糖尿病の患者さんは、このまま悪化してしまう方向へ行ってしまうのも、踏みとどまって現状維持を保つのも、本人のモチベーション次第。そのモチベーションをどう引き出すかが大事」

 Hさんが出会った糖尿病患者さん。数年前から糖尿病の投薬治療が始まっていましたが、お酒もたばこもスイーツも大好きで、運動は大嫌い。加えて離婚していて1人暮らしということで、「俺がどうなってもだれも悲しまないから」と生活習慣を改善しようという気持ちが全く見えない方だったそうです。主治医、Hさんたち看護師、管理栄養士たちが何か言っても、耳を傾けない。

 そんなとき、別れた元奥さんが引き取った娘さんが結婚。お孫さんが生まれたという連絡が男性にありました。

4 / 5 ページ

新井平伊

新井平伊

1984年、順天堂大学大学院医学研究科修了。東京都精神医学総合研究所精神薬理部門主任研究員、順天堂大学医学部講師、順天堂大学大学院医学研究科精神・行動科学教授を経て、2019年からアルツクリニック東京院長。順天堂大学医学部名誉教授。アルツハイマー病の基礎と研究を中心とした老年精神医学が専門。日本老年精神医学会前理事長。1999年、当時日本で唯一の「若年性アルツハイマー病専門外来」を開設。2019年、世界に先駆けてアミロイドPET検査を含む「健脳ドック」を導入した。著書に「脳寿命を延ばす 認知症にならない18の方法」(文春新書)など。

関連記事