上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

「閉塞性肥大型心筋症」の手術は合併症に対する注意が欠かせない

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

「閉塞性肥大型心筋症」という心臓病があります。大動脈とつながり全身に血液を送り出している左心室の出口にある、右心室との隔壁になっている心室中隔の筋肉が異常なほど厚くなり、左心室から血液を送り出す流出路が狭くなって血圧低下を来す病気です。

 肥大型心筋症は無症状のまま天寿を全うする方も少なくありませんが、閉塞性では心臓から全身に血液を十分に送り出せなくなるため、重症化すると「失神」「心不全」「突然死」という3大症状が現れるリスクが高くなります。

 日本では、肥大型心筋症は難病に指定されていて、2020年度に認定を受けている患者さんは4481人でした。しかし、心臓エコー検査によるスクリーニングでは人口の500分の1(約24万人)~1000分の1(約12万人)で認められるという報告もあります。肥大型心筋症の30%程度が閉塞性といわれています。患者さんの約半数は家族性(遺伝)で、一部は肥大型心筋症に合併する高血圧により心室中隔の筋肉だけが、より肥大化する後天性のタイプもあります。ほかは原因がはっきりわかっていません。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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