マバカムテンは、ミオシンの働きを阻害してアクチンの結合を抑えることで心筋の過剰収縮を抑制する薬です。昨年開催された米国心臓病学会での報告を含めたこれまでの臨床試験の結果では、閉塞性肥大型心筋症の患者さんにおいて、血行や心機能が有意に改善し、左室流出路の閉塞を軽減し、運動耐容能を増大させる効果が認められました。また、ほとんどの症例で深刻な副作用は認められず、将来的に重症の閉塞性肥大型心筋症が薬だけで良好にコントロールできる可能性が示されたのです。
現在、日本を含む各国で第3相試験が実施されていて、さらに有効性や安全性が確認されれば、満を持して実用化されるでしょう。
もちろん、まだクリアすべきポイントがあるのは確かです。閉塞性肥大型心筋症の中には、悪化が進んで最終段階になると、心筋細胞が壊死して瘢痕が形成され、心筋が硬くなってまったく動かなくなってしまうタイプがあります。新薬がそうしたケースをストップできるのかはまだわかりません。それも含め、長期的にも効果が認められれば、さらに恩恵を受ける患者さんが増えるでしょう。
上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」