正解のリハビリ、最善の介護

「全身管理」を行えるリハビリ医が欠かせないのはなぜか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 その患者さんも、それまで入院していた病院から、「無理して歩かせると心不全を悪化させるリスクがあるので原則、車いすでの生活になるかもしれない」というお話があったそうです。しかし近年は、適度な運動は筋力を維持して心臓の負担軽減につながり、運動能力を改善させることで心不全を起こしにくい体をつくれるという効果が世界トップの米国医学誌で明らかになっています。心不全だからこそ、しっかり体を起こして適切に歩かせなければいけないのです。

 たしかに、心不全では心臓に無理な負荷をかければ悪化します。しかし、負荷をかけた分だけ、心臓は強くなります。深刻な状態まで悪化させないようにギリギリのところまで負荷をかけ、ケアを行いながら心臓を強くし、強くなったところをさらに引き上げていく。悪化する一歩手前まで運動で負荷をかけ、それを繰り返して基礎を積み重ねていくと、患者さんは驚くほど回復するのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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