■重症心不全の患者が驚くほど元気になった
先ほどの患者さんは、「歩きたい」「しゃべりたい」「復職したい」という希望をお持ちでした。ですから、「うちではつらくない程度に歩かせますよ」と、すぐに歩行のリハビリを開始しました。もちろん、モニターや検査で状態を確認しながら実施します。定期的エコーでEF(左室駆出率)が悪化していないかどうか、月2回のレントゲンで肺水腫によって肺にたまった液体が増えていないかどうか、毎月の採血でBNP(心臓に負担がかかると心室などから分泌されるホルモン)が高くなっていないかどうか、運動機能やADL(日常生活動作)が毎週どのくらい向上してきたか……客観的な数値をきちんとチェックしながらリハビリを進めていきます。
すると、最初はベッド周囲の数メートルしか歩けなかった患者さんが、100メートル歩けるようになり、400メートルでも問題なくなりました。最終的には、無理だとされていた階段昇降も月1回は最大能力を評価し、どのくらいの負荷までなら大丈夫なのかを見極め、本人に「ここまでなら問題ありません」とお伝えして、自信を持ってもらったうえで退院してもらいました。入院時16%だったEFは、退院時に42%まで改善していました。リハビリ前とは見違えるほど元気になられた患者さんの姿を見て、前の病院の担当医は改善度にびっくりされていたそうです。
正解のリハビリ、最善の介護