がんと向き合い生きていく

戦争、病気、災害…年が明けてあらためて考えさせられた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 日本に生まれてよかったとの言葉とは真逆に、「この国に生まれたるの不幸」という言葉がありました。都立松沢病院の玄関に刻まれている、100年前の呉秀三院長の言葉です。

「我が国十何万の精神病者は実にこの病を受けたるの不幸の外に、この国に生まれたるの不幸を重ぬるものというべし」

 当時の日本は、精神病者監護法で精神病者を私宅監視、つまり、家族が座敷牢で監視することを認めていたのです。これは1950年に精神衛生法でなくなったのですが、日本の悲しい過去です。

 また、ハンセン病においては、感染力がきわめて弱い菌なのに、診断されると強制収容されて、そのまま一生を過ごした方がたくさんおられます。現在、国内のハンセン病の療養施設は13カ所あり、約800人の患者さんがおられるようです。私は、東村山市の多磨全生園、青森市の松丘保養園を訪問したことがあります。

3 / 4 ページ

佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

関連記事