正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医の力量として「投薬管理」が重要なのはなぜか

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

 脳卒中を発症した場合、脳の損傷箇所によっては後遺症としててんかんが起こるケースが少なくありません。くも膜下出血や脳出血ではよく見られますし、頻度は高くありませんが、脳梗塞でも起こる場合があります。また、高齢の影響では脳が変性し、てんかんが起こりやすくなるケースもあります。こうしたことから、この患者さんにも予防のために抗てんかん薬が使われていました。

 しかし、それにしては投薬量が多すぎます。この患者さんは小さな脳梗塞であり、脳出血痕も見当たらない。脳が安定した状態から判断して、まずは1種類の抗てんかん薬を中止しました。もちろん、老健スタッフによるてんかん管理体制を整えたうえでの実施です。

 すると、数日後に意識障害が改善してきて、約2週間で意識が清明となりました。そこで、さらに減薬すると、1カ月目にてんかん発作が起こりました。それを受け、抗てんかん薬は1種類のみで投薬量を発作が起きない最少量に調整しました。

2 / 5 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事