正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医の力量として「投薬管理」が重要なのはなぜか

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

 その結果、患者さんは覚醒し、しっかりした言葉で話され、コミュニケーションも正常になりました。体を動かすリハビリもどんどん進み、1人で杖歩行できるようになり、来院された当初とは別人のように回復されたのです。そんな患者さんの姿を見て、ご家族もびっくりされていました。

 もしも、あのまま薬の影響が見逃されていたら、この患者さんは重介助の状態が20~30年ほど続き、そのまま亡くなっていた可能性もあります。ご家族の負担も大きかったでしょう。主治医の力量=医者力は、患者さんやご家族にとってそれくらい大きいのです。

■まずは薬を5種類以下に減らすことを目指す

 日本では、薬の副作用によって状態を悪化させているケースが多くあります。80代、90代の高齢者が10~20種類ほどの薬を当たり前のように飲んでいるのですから、それも当然でしょう。いわゆる「ポリファーマシー(多剤併用)」と呼ばれる問題です。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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