正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医の力量として「投薬管理」が重要なのはなぜか

ねりま健育会病院の酒向正春院長(C)日刊ゲンダイ

 原因のひとつとして「複数の医師がそれぞれ複数の薬を処方している」ことが挙げられます。高齢になると、いくつも病気を抱えている場合が多いため、それぞれの病気に対して何人もの医師が診ているケースが少なくありません。たとえば、その患者さんを診ている4人の医師が、それぞれ5~6種類の薬を処方すればアッという間に薬が増えてしまうのです。

 当院では回復期病院でも老健でも、基本的に1人の主治医がその患者さんを診ています。そのため全部の内服薬をチェックでき、「これほど多くの薬を飲むのはおかしい」と判断できるのです。世界的な基準では、深刻な副作用や相互作用を起こさないためには、服用する薬は5種類までといわれています。当院では、まずは患者さんが飲んでいる薬を半分まで減らして、5種類以下にすることを目標にします。

 患者さんは入院されるときにたくさんの持参薬を持ち込みます。持参薬は2週間程度ですべて飲み終えるので、その時点でどの薬が本当に必要なのかを見極め、減らしていくのです。そこから、減薬しても問題ないかを確認し、状態が安定していれば5種類以下まで減らすことを目指します。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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