正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医に適切な「栄養管理」が求められるのはどうしてか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

■十分なタンパク質を補充していない施設もある

 しかし、中には「体重×0.7~0.8グラム」程度の量しかタンパク質を提供していない病院もあります。適切なリハビリを実施するためには十分な量のタンパク質が必要だと主治医が気づいていなかったり、その患者さんに必要なタンパク質の量を計算せずに食事をルーティンにオーダーするケースもあるのです。

 タンパク質=プロテインでの補充だけでなく、「ある程度のカロリー摂取が必要だけれど、カロリー制限も行わなければならない」「ビタミンの摂取は最低限これだけの量が必要になる」といったように、主治医は患者さんの病状と栄養状態を把握したうえで、筋力や体力が回復できる栄養管理をおいしい食事として提供するのが回復させるコツです。しかし、その当たり前が実践できていない医師や病院も少なくありません。適切なリハビリの効果を得て、事前に予測したレベルで人間力を回復させるためには、主治医には、食事の内容や量、味、体重や筋肉量、普段の活動の様子などを総合的に把握して、栄養とリハビリのバランスを調整していく力量が必要なのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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