正解のリハビリ、最善の介護

リハビリ主治医に適切な「栄養管理」が求められるのはどうしてか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 睡眠障害、覚醒障害、栄養障害のほかにも、回復が上がらない原因はまだあります。それが「痙縮」です。

 当連載の第8回で詳しくお話ししたように、痙縮というのは、脳内の神経伝達物質の分泌のバランスが崩れてドーパミンが不足し、体全体の筋肉や関節が硬直して動かなくなり、寝たきりになってしまう状態です。自分の意思で体を動かすことができないので積極的なリハビリは行えません。

 その予防のためには、常に全関節可動域を十分に動かし、全身の姿勢のコントロールを保ち、かかとを正確に接地して上肢や下肢を重力に抗して最大限に長く動かしていくことが大切です。さらに、重症例では筋弛緩薬のバクロフェンなどのクスリを使いながらリハビリを進めていく治療が必要になります。

 このように、リハビリによる回復の度合いが上がってこない場合、主治医がその原因をきちんと見極められれば治療による介入ができます。しかし、主治医の力不足で原因を把握できないと、「この患者さんの回復は、この程度で仕方がない」で終わってしまいます。だからこそ、より良い回復期病院を選ぶためには、患者さんを回復させる意欲のあるリハビリ主治医が在籍しているかどうかを確認するのが重要なのです。

4 / 5 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事