正解のリハビリ、最善の介護

「慢性期」の3つの段階に応じたリハビリはどんなものなのか

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 2つめの段階は「介護期」と呼ばれます。生活期に該当する患者さんでも、加齢とともに回復の度合いが上がらなくなってきて、むしろ徐々に機能や能力が落ちていきます。それを何とか食い止めてできる限り維持しようという段階です。この介護期から、さらにずっと機能や能力が落ちて活気が低下してくると、食事や水分をとれなくなり、反応も弱くなってきます。そうなるとおよそ2週間で亡くなる方がほとんどで、この2週間が「看取り期(終末期)」と呼ばれる段階です。

 慢性期のリハビリは、生活期、介護期、看取り期のそれぞれに応じた3つのリハビリがあり、内容が変わってきます。

 看取り期では、回復を目指すような攻めのリハビリはもちろん行えません。看取り期のリハビリは、定期的に起こして痛みや褥瘡ができないようにしたり、全身を伸ばして優しく拭くなどで清潔を保つようにします。また、食事ができなくても、意識があるようなら屋外に連れ出して快適を感じていただきます。これらもすべてリハビリなのです。

2 / 5 ページ

酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

関連記事