正解のリハビリ、最善の介護

「老健」のリハビリでより回復するための方法はあるのか?

「ねりま健育会病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 そこで当院では、回復を希望する方には制度上のリハビリ時間のほかに、自分ひとりで行う自主訓練を計画してタンパク質量を増やした筋活プログラムを行ってもらいます。午前中に1時間、午後に1時間半といった具合に、不足しているリハビリ時間を補うのです。

 ひとりで取り組むのが難しかったり、スタッフと一緒にがんばりたいという方に向けては「自費診療リハビリテーション」というシステムも導入しています。制度上の1日のリハビリ時間にプラスして、3単位(60分1万2000円)ごとに希望の単位数を組み込みます。仮に3単位をプラスすれば1日4.5単位(90分)になりますから、きちんと取り組むことができる高齢者は、立つ、歩く、コミュニケートするといった攻めのリハビリをどんどん実施できて、状態もぐんぐん良くなっていきます。

 老健というと、介護の合間に患者さんを入所させ、期間の3カ月が終わって自宅に戻ったら、再び3カ月後に入所させる……といった「3カ月リピートのお預かり施設」というイメージを抱いている人がほとんどでしょう。もちろん、「介護している家族が潰れてしまわないよう、一息つくために利用する」という使い方には大きな意義があります。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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