正解のリハビリ、最善の介護

退院後に自宅で続けるリハビリはどんなものが有効なのか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 回復期病院や介護老人保健施設(老健)で攻めのリハビリを受け、回復して退院された患者さんは、自宅でもリハビリを毎日の習慣として続けることが大切です。

 まず、意識して取り組んで欲しいのは、筋力と体力が落ちないようにすることです。そのためには「歩く」のが基本で、1日5000歩以上、距離にすると2キロ以上は歩くことが推奨されています。これを継続することはもちろん有効なのですが、さらに重要なリハビリが「立ち上がり訓練」です。筋力は100歳でも増加します。

 まずイスに座った状態から、できれば手は使わずに腰を浮かせてスッと立ち上がります。立ち姿勢では床に踵をつき、膝と股関節を伸ばします。次に上半身を少し前に倒してお辞儀するような姿勢で腰を落とし、再びイスに座ります。このとき、勢いよくドスンと座らないようにします。圧迫骨折を防ぐためです。

 この動作を連続して30回が1セットで、それを朝、昼、晩と食事の前か後のお気に入りの時間に1日3セット行います。30回×3セットですから1日合計90回になります。これは最低限の回数で、可能ならば50回×3セット、1日合計150回行います。この立ち上がり訓練を継続してできるようになると、足腰の筋力や股関節の動きが安定して、転倒しにくくなるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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