正解のリハビリ、最善の介護

退院後に自宅で続けるリハビリはどんなものが有効なのか?

「ねりま健育病院」院長の酒向正春氏(C)日刊ゲンダイ

 できれば、「学習を楽しむ」ことをおすすめします。特別な趣味がなかったとしても、歴史や文化、旅行、生活スタイル、食べ物やファッションなどの興味のあるテーマを探してカルチャースクールに通う。地域の自治体や町内会が実施している活動に、何をしているのかを確認するつもりでもいいですし、ご近所さんをお手伝いするためでもいいので、参加してみる。近所の図書館が開催しているプログラムやイベントもとても考えて企画されていますのでぜひ参加してみてください。新しい学びを楽しめば、脳にとって大きな刺激となります。

 退院後に有効なリハビリとして挙げた、①「筋力と体力を維持、向上する」②「コミュニケーションをとる」③「学習を楽しむ」という3つのポイントは、認知症の予防リハビリでもあります。患者さんが65歳を超えていなければ、退院後は仕事に復帰するのがいちばん望ましいリハビリになるのですが、年齢などが理由で就労できない場合、この3つのポイントを実践すれば認知症も予防できます。これは、世界的な医学誌「ランセット」が発表している「自分で改善できる9つの認知症リスク要因」のうちの3つに該当するポイントでもあります。

 自宅でのリハビリをしっかり行えば、健康寿命を延ばすことにつながるのです。

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酒向正春

酒向正春

愛媛大学医学部卒。日本リハビリテーション医学会・脳神経外科学会・脳卒中学会・認知症学会専門医。1987年に脳卒中治療を専門とする脳神経外科医になる。97~2000年に北欧で脳卒中病態生理学を研究。初台リハビリテーション病院脳卒中診療科長を務めた04年に脳科学リハビリ医へ転向。12年に副院長・回復期リハビリセンター長として世田谷記念病院を新設。NHK「プロフェッショナル 仕事の流儀」(第200回)で特集され、「攻めのリハビリ」が注目される。17年から大泉学園複合施設責任者・ねりま健育会病院院長を務める。著書に「患者の心がけ」(光文社新書)などがある。

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