「進行性核上性麻痺(PSP)」という難病があります。40歳以降に発症し、初期から転びやすくなって転倒を繰り返すようになるのが大きな特徴です。以前、このPSPの77歳になる患者さんが来院され、「転ばないようにするためにはどうしたらいいでしょうか」と相談されました。そこで、先ほどの立ち上がり訓練を導入したのです。
最初は、立って座ってという動作を連続5回くらいしかできませんでしたが、その患者さんは残存能力があったので、訓練を繰り返すことで連続30回できるようになりました。これを無理なく1日3回、合計90回行える状態になってから自宅に退院され、その後も立ち上がり訓練を毎日続けたところ、それからまったく転ばなくなったそうです。
ただ歩く場合であれば、立っているところからスタートするのでそこまで筋力を必要としないでも歩くことができます。しかし、座っている姿勢から腕は使わずに背筋を伸ばしたままグッと立ち上がり、再びスッと座る動作は、脚の筋肉、腹筋、背筋を使います。ですから、立ち上がり訓練は、筋力と体力を維持するためにとても効果的なリハビリなのです。これは、PSPの患者さんだけでなく、筋力と体力が落ちてくる高齢者や、廃用症候群の患者さんなども含め、すべてに共通します。
正解のリハビリ、最善の介護