医療数字のカラクリ

厳しい抗がん剤治療 途中でやめた「脱落者」をどう扱うか

 つまりニボルマブ群は10%弱の人が、ドセタキセル群では30%以上の人が“予定通りの治療を受けていない状況”で効果が調べられているのです。そのため、ドセタキセルで治療ができた人に限って分析すれば、ニボルマブとの差はもう少し小さいのかもしれません。

 しかし、治療を最後まで受けられた人たちだけで比べるよりは、最初に治療を始めた人すべてで比較した方が、臨床現場でのリアルな効果を見ることができます。このすべての人を含めて分析する方法を「治療意図に基づく解析」と呼び、臨床試験の分析はまずこの方法で行われるのが標準です。

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名郷直樹

名郷直樹

「武蔵国分寺公園クリニック」名誉院長、自治医大卒。東大薬学部非常勤講師、臨床研究適正評価教育機構理事。著書に「健康第一は間違っている」(筑摩選書)、「いずれくる死にそなえない」(生活の医療社)ほか多数。