気鋭の医師 注目の医療

手術不能の患者に希望を与える欧米流「がんの時間治療」

横浜市立大学付属市民総合医療センター消化器病センターの田中邦哉准教授(提供写真)

 どの抗がん剤にも、それぞれ体の代謝が最大になる時間がある。それがピークになる、副作用が出にくい時間を狙って投与することで、より大量の抗がん剤が投与できるという。

 正常細胞は時間のリズムがきちんと働いているが、がん細胞のリズムはバラバラ。そのためがん細胞により大きなダメージを与えることができるわけだ。

「抗がん剤の投与は、太ももの付け根からカテーテルを入れて直接、肝臓に薬を送る『肝動注化学療法』(以下、肝動注)で行います。使う抗がん剤は『オキサリプラチン』と『5FU』です。オキサリプラチンは夕方16時に最大量になるように、5FUは朝4時に最大量になるようにポンプを使ってスピードや量を調節します」

■副作用が10分の1、奏効率は20%増し

 田中准教授は、これらの方法をがん時間治療の第一人者がいたフランスのポールブルース病院に留学して習得。しかし、国内では通常の標準治療と異なるので、実際に患者へ実施するには病院の倫理委員会を通す必要があり、患者の人数を決めるなどして少しずつ研究を進めてきた。在籍する病院によって、最初から患者に実施できた症例もあれば、抗がん剤の点滴が効かなかったセカンドライン、サードラインとして実施した症例もある。それでもかなりいい成績が得られている。

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