独白 愉快な“病人”たち

声帯を削った昆夏美さん「新しい喉で新たな可能性を」

昆夏美さん(C)日刊ゲンダイ

 削ったのは0.1ミリと0.05ミリという半紙よりも薄い粘膜の表皮です。たったそれだけでも「声帯結節」の手術は全身麻酔でした。

 この病気は、声帯にできた“ペンだこ”のようなもの。声を出すときに振動する左右の声帯膜がぶ厚く硬い組織になってしまうことでうまく声が出せなくなる病気です。 2016年10月、私はこの病気で出演するはずだった「ミス・サイゴン」の舞台を休演してしまい、プロとしての責任を果たせませんでした。

 代わりを務めてくれたお二人(トリプルキャストだったため)はもちろん、スタッフ、キャスト、何より期待してくださっていたお客さまを裏切ってしまったことへの申し訳なさでいっぱいでした。それと同時に、自分の一番イヤな部分を自覚した経験でもありました。

 異変は、そのひとつ前の6月の舞台から始まっていました。初日から2日目の朝、突然、声がカスカスになってしまったのです。ハスキーを通り越したあまりの声の出なささに衝撃を感じました。というのも、これまで風邪以外で喉の不調を感じたことはなかったからです。お酒を飲んだ翌朝でさえ、ガサつきひとつなく“私は人一倍喉が強いんだ”と自負していました。

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