天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

外科医にとって「自己管理」は不可欠な適性といえる

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 今年8月、都内の病院に勤める男性医師が過労で自殺し、労災と認定されたという報道がありました。5月にも新潟の病院の女性研修医が自ら命を絶ち、過重労働が原因だと労災認定されています。医師の長時間労働はかねて指摘されている問題で、あらためて医師の働き方について議論が交わされています。

 医師不足や偏在など、いくつも要因はありますが、一方で「自己管理」ができない医師が増えているのも事実です。

■“流れ”に巻き込まれると悲劇に

 私が医学部に入学した70年代後半に比べ、いまは医学部の定員が増えています。同時に少子化によって同学年の受験者数が減ったことで、かつての20倍くらい医学部へ入学しやすくなっているのです。医学部の入学者は偏差値も下方に拡大し、裾野が格段に広がりました。こうした状況とともに、「なんとなく医者になりたい」といった漠然とした動機で入学してくる学生も増えています。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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