天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

女性の「発作性心房細動」は男性より早いタイミングで発症

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 心房細動とは逆に、女性の方が発症が遅い心臓疾患もあります。狭心症や心筋梗塞などの冠動脈疾患です。高血圧、高脂血症、高血糖、喫煙といった因子が代表的なリスクファクターなので、男性の生活習慣が招きやすい疾患といえます。そのため、全体的な発症率や死亡率は男性の方が高いというデータが出ています。

 しかし、女性は閉経を迎える年代になると冠動脈疾患が急増します。70歳では発症率や死亡率が男性と同等になり、80歳を越えるといずれも男性を上回ります。血管の柔軟性を保護していた女性ホルモンのエストロゲンの分泌が閉経によって減少することが大きく影響していると考えられています。

 自覚症状も男性と女性では異なる傾向があります。男性は胸痛を訴えることがほとんどですが、女性は顎、咽頭、背中などの放散痛や吐き気や嘔吐などが表れるケースが多く見られます。そのため、診断や治療が遅れる場合が少なくありません。

3 / 4 ページ

天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

関連記事