がんと向き合い生きていく

患者にとって「がん」という言葉は計り知れないほど重い

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■「がん=死」というイメージはまだまだ根強い

 トラック運転手のWさん(45歳・男性)は、勤務している会社で受けた健診結果を持参して来院されました。

 健診結果には「肥満、糖尿病、高脂血症、肝機能障害のため要受診」と記載されていて、昨年も一昨年も同様の指摘を受けながら受診しなかったこともあり、数値はさらに悪化していました。

 私は「糖尿病が悪化していて、このままでは死んじゃうよ。糖尿病の専門医を紹介します」と進言したのですが、Wさんは「今日は時間がないので、また来ますから、薬だけ下さい」と言うだけであまり表情が変わりません。

 しかし、「肝機能の異常もあるし、腹部超音波検査も行います。このような採血結果で膵臓がんが隠れている方もいるんですよ」と話すと、一転して「ぜひ超音波検査をして下さい」と希望されました。幸い膵臓がんは認めませんでしたが、糖尿病科に入院となりました。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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