また、全身麻酔を局所麻酔にすることで患者の負担が大きく減るということもありません。局所麻酔の方が術後の回復が早いといわれていますが、人工心肺を使って心臓を一時的に止めるわけですから、負担はそれほど変わらないといえます。今回のように、アレルギーがあって全身麻酔ができないというかなり特殊な状況における選択肢のひとつにはなるかもしれません。しかし、そうそう遭遇するケースではないですし、リスクや手術の完成度を考えると、麻酔自体が致死的になる状況を除けば、わざわざ覚醒下で手術を行うメリットは少ないのです。
そもそも、僧帽弁閉鎖不全症の手術は一般的に緊急を要する場合は多くありません。本当にいますぐ手術をしなければ死亡してしまうような緊急手術で、今回と同じような処置ができれば素晴らしいと思います。しかし、そこまでして僧帽弁閉鎖不全症の手術を慌ててする必要があるのかという意見があるのも事実です。
天皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」