がんと向き合い生きていく

「がん細胞があるかどうか」を確認する検査は最も重要

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

■過信は禁物だが…

 34歳のPさん(女性、妊娠歴なし)は、右乳頭からピンク色の分泌物があり、ある病院の乳腺外科を受診。エコー検査、マンモグラフィー、CT検査などで特に異常は認められませんでした。しかし、分泌物の細胞診検査でクラスⅢと判定されました。つまり「悪性細胞を疑うが確定的ではない」という診断です。

 Pさんはとても心配になり、手術するかどうか悩みました。そこで担当医は、病理医と相談して他のがん専門病院の病理医にその標本を送って意見を聞くことにしました。その結果、数人の病理医の意見がクラスⅡだったことから、定期的に検査をして経過を見ることになりました。幸いPさんはその後、分泌の症状はなくなり、問題なく過ごしています。

 以前ある病院で細胞診がクラスⅣの判定で乳がんと診断された患者が手術を受けたものの切除した乳腺にはがんが見つからず、がんではなかったのに乳腺を切除されたという悲劇がありました。細胞診を過信してはいけないということです。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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