AさんがB病院に移ってすぐに気付いたのは、建物の古さ、暗さ、壁の染み、トイレが遠いことなどでした。それなのに、個室料金はF病院と同じでした。Aさんは、「自分はF病院に捨てられた……」と家族に漏らしたといいます。
私は以前、B病院を訪ねたことがあり、その古い建物とF病院を思い浮かべると、「なるほど」と納得してしまいました。
■転院を勧められた施設でギャップを感じる
この10年余り、がん対策基本法・基本計画もあって、がん拠点病院などの大病院は立派な建物と設備、スタッフも充実したところが多くなりました。大病院にはがん患者がたくさん集まり、がんの種類や進行度、治療法などによって異なりますが、短い入院期間で、多くは外来での治療が中心になります。
もし、治療が困難となり、がんが悪化して入院期間が長くなりそうになった場合、病状などにもより、これも一概には言えないのですが、在宅医療とかホスピス、あるいは中小規模の病院へ移るのを勧められることがあります。患者は、以前から覚悟はできていたとしても、この時はいよいよ死が迫ったことを実感し、心は大変なことになっていると思います。
がんと向き合い生きていく