Dr.中川のみんなで越えるがんの壁

英医学誌に注目研究 生活習慣病の薬と発がんリスクの関係

なるべく頼らない(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

■抗がん剤で白血病も

 それから7年、その報告は論争を呼び、日本はもちろん、各国で検証研究が行われています。膀胱がんの発症リスクがあることを肯定する内容もあれば、否定するものもありますが、「否定できない」という見方でほぼ間違いないでしょう。

 アクトスや合剤が発売された当初、添付文書に膀胱がんに関連する記載はありませんでしたが、一連の検証作業を受けて厚労省はメーカーに添付文書の改訂を指示。両論が併記されるようになったまま記載が残っているのは、アクトスと膀胱がんとの因果関係が否定できない証拠といえるでしょう。

 抗がん剤は、がんを治療するための薬ですが、実は抗がん剤を使うことで白血病を発症することは治療の現場では日常茶飯事。「えっ」と驚かれるでしょうが、現実なのです。食材として摂取する分には問題なくても、ベータカロテンやビタミンEなどのサプリメントががんを増やすことも間違いありません。

 では、どうすればいいのか。やみくもに薬に頼るのではなく、薬の使用は最低限に。それが薬との賢い付き合い方といえます。がんの一部も生活習慣病になりつつありますが、がんも含めて生活習慣病は生活習慣の改善なしにはよくならないのです。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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