独白 愉快な“病人”たち

重病3つ同時に…シンガー小坂忠さん壮絶闘病から復活まで

小坂忠さん(C)日刊ゲンダイ

 本番の切除手術は10時間。予定を2時間もオーバーしたようです。一番きつかったのは、そこから2週間ぐらいの期間でした。肺に水がたまり、体には管が何本もつながれ、身動きが取れない状態。もちろん、トイレも看護師さんが全部やってくれる。何よりそれが男としては屈辱的で、肉体の痛みより、むしろそっちのほうがつらかった。

 肉体は肉体で痛み止めを使っても眠れないほど痛かった。ただ、家内がお見舞いに来て、ボクの足をさすってくれるときだけは不思議と眠れました。「私がいるときぐらい起きててくれればいいのに」と言われましたけどね(笑い)。

■絶飲食が終わり、最初に食べた「おもゆ」に涙がこぼれた

 ちょっと面白かったのは、うっかりナースコールをベッドの下に落としてしまったときのことです。動けないときのナースコールは、唯一の連絡手段でしょう? いわば命綱。それを失ってすごく困りました。で、ふとひらめいて枕元にあったスマホを持って音声アシスタント機能を呼び出しました。「シリ、杏林大学病院へ電話して」と言ってみたら病院の代表電話につながったので、受付から病室のフロアのナースセンターにつないでもらい、「○号室の小坂ですが……」と遠回りのナースコールをしたんです。我ながら傑作でした。

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