後悔しない認知症

高齢の親の「対象喪失」状態を軽く考えてはいけない

写真はイメージ(C)日刊ゲンダイ

「いつまでも悲しんでいりゃいいんだ」「いくら悲しんでも亡くなった人は戻ってこない」などの叱責や説得は逆効果だ。

「悲しいよね。気持ちは僕も同じだよ」「ともかく苦しまなくてよかったね」といった「寄り添いの言葉」で接するべきだ。対象喪失の状態から抜け出したいと一番感じているのは当の本人なのである。

 また、持病を抱えた高齢者の場合、対象喪失のショックによる心理的ストレスが病状を悪化させる可能性も否定できない。妻を亡くした後、元気を失った夫がほどなくして後を追うように亡くなってしまうことがある。介護施設に一緒に入所した高齢の夫婦のケースでもこうした例はしばしば見られる。

 あくまで想像の域を出ないが、先日肺炎で亡くなられた内田裕也さんのケースも、対象喪失の影響で免疫機能が低下した可能性は否定できないのではないだろうか。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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