何かアクションを起こさないといけない。そう考えた中で、佐藤君の顔が一番に浮かんできたのです。メールではがんに触れ、書いていた小説も添付しました。すると10分もしないうちに佐藤君から電話があり、「とにかく会おう」と言われたのです。
佐藤君からは「豊島、何がしたいんだ」。この世に生きた証しを残したいと返すと、即答で「本を作ろう。豊島の体験を後輩に伝えよう」と。私は普通のサラリーマンで、誰も私に興味を持たないだろう。しかし佐藤君は「豊島が窮地に陥った時どう乗り越えてきたかを語ることは、後々、人のために生きてくるんだよ」と言ったのです。
それから私が半生を振り返った手記をまとめ、佐藤君がそれについてインタビューするという共同作業が始まりました。佐藤君が原稿を書き上げたのは今年2月8日。私が強力な抗がん剤治療のため国立がん研究センターに入院した翌日です。