後悔しない認知症

前頭葉が萎縮してまっても人間の脳には「予備力」がある

写真はイメージ

 前回「どこかが痛いわけでも、生活に不自由をきたしているわけでも、自覚症状があるわけでもない」のであれば、高齢の親が長生きだけのために毎日薬を飲むのは避けるべきだと述べた。厚労省や一部の医者が力説する、いわゆる基準値などに惑わされて、「良くボケる」を損ねることになっては本末転倒である。また、CT画像による脳の萎縮なども、少なくとも臨床的には認知症特有の症状に直接結びつくとはかぎらない。以前、70代、80代でも現役で活躍している政治家、実業家の脳内のCT画像を見たことがある。たしかに、脳全体に萎縮はあったものの、認知症の症状は見られなかった。

■刺激で意欲の低下は防げる

 私自身、「前頭葉が縮めば必然的に意欲も衰えるのでは?」と考えていたのだが、彼らは「若いころと比べても、仕事や趣味への意欲は衰えていない」とのことだった。逆にCT画像では前頭葉の萎縮は認められないのに、認知症の人以上に意欲が低下している人もいる。つまり、前頭葉が萎縮してしまうことを止めることはできなくても、その萎縮した前頭葉を刺激し続けていれば、気持ちや意欲の低下を防ぐことができるのだ。

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和田秀樹

和田秀樹

1960年大阪生まれ。精神科医。国際医療福祉大学心理学科教授。医師、評論家としてのテレビ出演、著作も多い。最新刊「先生! 親がボケたみたいなんですけど…… 」(祥伝社)が大きな話題となっている。

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