女性の細胞では、2本あるX染色体のうち、1本が完全に休眠状態になっています。つまり、見かけ上はXX型なのですが、実際に使われているX染色体は1本だけなので、事実上のX型なのです。これが「X染色体の不活化」と呼ばれる、女性だけに見られる現象です。
でも、ちょっと待ってください。男性はXY型ですが、年齢とともにY染色体が消失してX型に近づいていくという話でした。そして、Yの消失に伴って、がんなど重大な病気のリスクが上がってしまうのです。だとしたら、女性は実質的にX型なのですから男性よりも病気のリスクが高く、寿命が短いはずではありませんか。
確かに、細胞レベルで見ればそういうことが言えそうです。
しかし、X染色体には「父系X」と「母系X」があります。それぞれ同じ遺伝子をのせていますが、その片方が壊れていたり、働きが悪かったりはよくあることです。ですから、どちらが休眠するかで健康リスクが変わってくるはずです。
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永田宏
長浜バイオ大学コンピュータバイオサイエンス学科教授
筑波大理工学研究科修士課程修了。オリンパス光学工業、KDDI研究所、タケダライフサイエンスリサーチセンター客員研究員、鈴鹿医療科学大学医用工学部教授を歴任。オープンデータを利用して、医療介護政策の分析や、医療資源の分布等に関する研究、国民の消費動向からみた健康と疾病予防の解析などを行っている。「血液型 で分かるなりやすい病気なりにくい病気」など著書多数。