がんと向き合い生きていく

今日は抗がん剤を打てるだろうか…がん患者の複雑な気持ち

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 造園業を営む一人暮らしのAさん(55歳・男性)は、進行した膵臓がんで手術はできず、抗がん剤治療を受けています。

 Aさんの、ある一日です。朝6時に起きて、朝食は取らずに猫のタマちゃんに餌をあげ、7時には家を出ます。最寄り駅まで15分くらい歩いて、「今日は抗がん剤を打てるか、打てないか」と不安に思いながら病院に向かいます。

 新型コロナウイルスの影響で、行き交う人はみんなマスクをして、黙々と駅に向かっていました。Aさんは、「自分はがんを持っていて、新型コロナのハイリスク……うつったら大変」と思って注意しています。

 電車は混んでいて、Aさんはいつも立っていますが、つり革を持たないようにしています。先週は、マスクはしていても咳をする人が近くにいたので、ぎゅうぎゅう詰めの中、無理やりその場から離れました。

 8時30分、病院に着いて採血のための順番待ちに並び、終わってから受診室の前で待ちます。

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佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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