がんと向き合い生きていく

共感を超え、重篤ながん患者にずっと付き添う看護婦がいた

佐々木常雄氏(C)日刊ゲンダイ

 5日後、Gさんは亡くなりました。Gさんの母親は、「Aさんには、どんなに感謝しても感謝しきれない。息子は最期まで幸せだった。Aさんは息子の幸せを守ってくれた」と話されました。

 しかし、A看護師の落胆は尋常ではありませんでした。Gさんが亡くなってからしばらく休んでいたのですが、結局、病院を辞めてしまいました。その後、どうされたかは分かりません。

 仕事と恋愛の公私混同だったと言えますが、人生、命をかけて、愛する人を守った、看護した。A看護師は本望だったのだろうと思います。

 子供たちが「看護師になりたい」と夢を持ち、看護学校に入学し、そして病院に勤務した時、自分の夢と現実とのギャップに悩む新人看護師はたくさんいます。看護師は毎日、毎日、病院の規則に縛られながらも、「病気の患者の役に立ちたい。救ってあげたい」という優しい気持ちで頑張ってくれています。

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佐々木常雄

佐々木常雄

東京都立駒込病院名誉院長。専門はがん化学療法・腫瘍内科学。1945年、山形県天童市生まれ。弘前大学医学部卒。青森県立中央病院から国立がんセンター(当時)を経て、75年から都立駒込病院化学療法科に勤務。08年から12年まで同院長。がん専門医として、2万人以上に抗がん剤治療を行い、2000人以上の最期をみとってきた。日本癌治療学会名誉会員、日本胃癌学会特別会員、癌と化学療法編集顧問などを務める。

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