上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

医療現場を崩壊させないために考えるべき3つのポイント

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 次に重要なのが、③“ポストコロナ”の体制です。医療体制を維持するためには、感染が終息したタイミングで、できるだけ早く平常業務に戻る必要があります。

 何より重視しているのがスタッフの休息です。今回のような緊急事態では、一番問題になってくるのがストレスです。肉体的な負担よりも、精神的なダメージが大きく響いてくるのです。ですから、スタッフのストレスをうまく取り除く工夫が求められます。

 新型コロナに対応する専用チームはまた別の対策が必要ですが、一般の治療に当たっているスタッフには的確に配置することで余裕をつくり、終息後に備えさせます。手術を含めて一般診療を縮小したことで生まれる時間を有効利用するのです。

 家族と一緒に長く過ごしたり、普段はなかなか取り掛かれなかった研究活動をしたり、やり残していた仕事をこなしたり……スタッフによって時間の使い方はさまざまです。もちろん、何もしないでただ休息をとるケースもあるでしょう。こんなふうに自分で考えて余計なストレスを受けないような活動をすることで精神的な負担を軽減しておけば、感染が終息したタイミングですぐに通常業務をスタートさせることができます。本来の仕事でかかるストレスもそれほど無理なく受け入れることができて、いち早く元のペースを取り戻せるのです。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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