進化する糖尿病治療法

血糖値を下げるだけでは不十分 脂質異常や高血圧のチェックも

肥満によるダメージは1つだけじゃない(C)ロイター

 糖尿病の人、中でも肥満があって糖尿病を発症した人は、脂質異常症、高血圧を疑ってかかるべきです。

 また、女性は、更年期(45~55歳前後)以降は女性ホルモンの分泌が減少し、その影響でLDLコレステロールが上昇しやすくなるので、肥満でなくても、LDLコレステロールの数値の推移に注意しなくてはなりません。

 せっかく糖尿病の薬を服用して血糖値をコントロールできていても、脂質異常症や高血圧の治療が行われていなければ、「動脈硬化の進行を抑え、血管へのダメージを極力小さくする」という目的を果たせていません。糖尿病治療と、脂質異常症治療、高血圧治療は切り離せないのです。

 高血圧は、初期であれば減塩で血圧を下げられるかもしれません。一方、脂質異常症は薬でないと数値を下げられない場合がほとんどです。LDLコレステロールは体質との関連が大きく、運動や食生活改善ではなかなか下がらないからです。

 糖尿病の人が新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすい。今できる対策の一つが、適切な糖尿病治療であることを考えると、血管の炎症・動脈硬化を抑えるという観点からも、脂質異常症・高血圧治療も適切に行われているか、確認する必要があります。

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坂本昌也

坂本昌也

専門は糖尿病治療と心血管内分泌学。1970年、東京都港区生まれ。東京慈恵会医科大学卒。東京大学、千葉大学で心臓の研究を経て、現在では糖尿病患者の予防医学の観点から臨床・基礎研究を続けている。日本糖尿病学会、日本高血圧学会、日本内分泌学会の専門医・指導医・評議員を務める。

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