少し前、小堀さんは医師たちでつくる団体から原稿を依頼された。その時に付けたタイトルについて、団体側に難色を示されたこともあったという。それは定年を迎えるまで外科医としてメスを握り、その後は訪問診療医として400人以上の患者をみとってきた経験をもとに書いた論文だった。
「タイトルは『生かす医療から、死なせる医療へ』と付けました。手術室を出て在宅医療の現場に足を運ぶうち、『救命・治療・延命』だけが医療ではないと痛感したからです。ところが、団体側から“言葉が乱暴だ”との指摘を受けてしまった。それで『命を永らえる医療から、命を終えるための医療へ』と変えたのですが、これも却下されて……。医師の団体でさえも死を忌み嫌っている、現実のものとして受け止められなくなっているのだと感じました」
医師でさえも死を疎み、嫌悪するようになっているのだ。こうした傾向は、一般の社会になると、より顕著だ。
死なせる医療 訪問診療医が立ち会った人生の最期