Dr.中川 がんサバイバーの知恵

池江璃花子は順調に回復 白血病AYA世代の妊娠・出産対策

池江璃花子(代表撮影)

 一般論として白血病やリンパ腫など血液腫瘍の治療として骨髄移植がなされるケースでは、その前処置として大量の抗がん剤投与と放射線の全身照射が行われます。そのダメージにより、女性は卵巣機能、男性は精巣機能が損なわれやすいのです。

 ほかのがんで行われる抗がん剤でも、卵巣や精巣の機能が低下しますが、多くは時間とともに回復。無月経、無排卵症、無精子症になることはまれです。

 しかし血液腫瘍の場合は、治療のダメージが強く、高頻度で回復しないケースが報告されています。その大きなリスクが「全身や骨盤への放射線照射」「骨髄移植のための化学療法」で、抗がん剤では特にブスルファンやシクロホスファミドなどの薬剤が、高リスクです。

 そこでAYA世代のがんでは、妊孕性を温存する対策が欠かせません。男性は治療が始まる前に精子を採取し、凍結保存すること。女性で配偶者がいるケースは、卵子を採取し、パートナーの精子と受精させた受精卵として凍結保存するのが1つ。2つ目が、未受精卵の凍結保存です。さらに最近は、卵巣組織そのものの凍結保存も一部の施設で行われています。

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中川恵一

中川恵一

1960年生まれ。東大大学病院 医学系研究科総合放射線腫瘍学講座特任教授。すべてのがんの診断と治療に精通するエキスパート。がん対策推進協議会委員も務めるほか、子供向けのがん教育にも力を入れる。「がんのひみつ」「切らずに治すがん治療」など著書多数。

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