上皇の執刀医「心臓病はここまで治せる」

コロナ禍で運動量が激減していたら「腹式呼吸」で心臓を守る

天野篤氏(C)日刊ゲンダイ

 腹式呼吸によって内臓を包んでいる「インナーマッスル」が鍛えられることも心臓に良い影響を与えます。インナーマッスルは深層筋と呼ばれ、脊椎や骨盤を支え姿勢保持などに関わっている深いところにある筋肉です。姿勢や関節の安定性を高めるだけでなく、呼吸にも関係しています。

 心臓は血液を全身に送り出すポンプの役割を担っています。インナーマッスルを含めた全身の筋肉は、心臓から送り出される血液を受け取る側で、それがしっかり活動していると血圧が安定するなど心臓の負担が減るのです。

 さらに、腹式呼吸をお風呂などの湿度の高い場所で実践すると効果が高くなります。好みの香りのアロマテラピーなどと組み合わせると副交感神経が優位になる効果も期待できます。副交感神経が優位になると、心拍数が抑えられ、血管が拡張して血圧も低下するのです。

 呼吸法で心臓の健康管理をする場合、日頃から心拍数=脈拍数を計測して把握しておくことをおすすめします。また、血中の酸素飽和度を計測するパルスオキシメーター(経皮的動脈血酸素飽和度測定器)があれば、腹式呼吸を何回行うと最大値に到達するかを確認しておくといいでしょう。

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天野篤

天野篤

1955年、埼玉県蓮田市生まれ。日本大学医学部卒業後、亀田総合病院(千葉県鴨川市)や新東京病院(千葉県松戸市)などで数多くの手術症例を重ね、02年に現職に就任。これまでに執刀した手術は6500例を超え、98%以上の成功率を収めている。12年2月、東京大学と順天堂大の合同チームで天皇陛下の冠動脈バイパス手術を執刀した。近著に「天職」(プレジデント社)、「100年を生きる 心臓との付き合い方」(講談社ビーシー)、「若さは心臓から築く 新型コロナ時代の100年人生の迎え方」(講談社ビーシー)がある。

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